今回はエアバス社の最新鋭機A350XWBの見分け方を解説します。2022年現在、日本の航空会社では日本航空だけが採用している大型双発機に分類される機体です。初飛行は2013年。
正式名称はA350XWBと表記し、一般的にA350(エーサンゴーマル)と省略して呼びます。
“XWB”はeXtra Wide Bodyの略で太い胴体を持つことを意味します。機体の名前にあえて”XWB”の言葉を盛り込むあたりに、エアバスの開発者が太めの胴体でキャビンの快適性と輸送量の増強をアピールしようとしたことが伺えますね。
もともとA350は、ライバルのボーイング社の最新鋭機B787に対抗するために計画されました。B787と同様に強度が高く軽量な炭素繊維複合材を機体構造の多くに使われています。A350はB787から数年遅れてデビューしましたが、新技術を多く詰め込んだB787が新機種にありがちの初期トラブルに苦しんだことに比べ、A350はデビュー当初から初期トラブルが極めて少ない成熟した機体として世界の航空会社から高い評価を得ています。
A350XWBを見分ける方法
A350は日本航空が羽田と国内の主要空港(新千歳・伊丹・福岡・那覇等)を結ぶ便をメインに使用しており、特に羽田空港で見かける確率が高い機体です。海外の航空会社でも多く使用されている機材であるため、成田や関空などの国際空港でも多くのA350を見ることができます。それではA350を見分ける方法をみていきましょう。
顔が特徴的なたぬき顔!
コクピットの窓を飛行機の目と見立てるとA350の場合は目の周辺が黒く塗られたぬきのような顔をしています。

上の左側の写真のようにA350はコクピットの窓と窓の間のフレームと窓周辺に黒色の塗装が施されています。この塗装を「アンチグレア」と言います。グレアとはまぶしさのことで、黒の塗装部分が太陽光を吸収し、反射光がコクピット内部のパイロットに当たるのを軽減する効果があります。プロ野球のデーゲームで時々選手の目の下に黒いシールを貼っているのを見かけることがありますが、あれもほほに当たった太陽光の反射を軽減するために貼っているそうです。
目の隈のような塗装はA350特有のものというわけではありませんが、飛行機を見分ける上で有効な手段ではあります。他にも新型のA330neoやA340neoでも採用されています。
天に昇っていくような滑らかな翼端
旅客機の中には翼の端に「ウイングレット」という板が付いている飛行機があります。この板は燃費向上などの役割があります。A350のウイングレットは他の飛行機と比べて滑らかで美しい形状が特徴的です。動物の翼を模倣してデザインされました。「この飛行機の翼端の曲がりは美しい…」と感じたらA350と判断していいと思います。

B787などと同じくLEDライトを使用
A350も最新鋭機種に相応しく、灯火にLEDライトを使用しています。その他の飛行機のライトと比べて柔らかい光り方で、夜間や遠くから見るときに見分ける要素として有効な特徴です。ただこれだけで機種を見分けられる決定打とはなりにくい特徴ですね。
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A350-900とA350-1000の違い
エアバスA350XWBには大きく分けてA350-900とA350-1000の2つの機種があります。
主な違い
- 胴体長: A350-1000はA350-900よりも約7.7メートル長く、全長は73.78メートルです。A350-900の全長は66.8メートルです。
- 重量とエンジン: A350-1000は重量が大きいため、より強力なエンジン(トレントXWB-97)を使用しています。一方、A350-900はトレントXWB-84を搭載しています。
- 主脚: A350-1000は重量が大きいため、主脚が3軸の6輪ボギーですが、A350-900は2軸の4輪ボギーです。
- 操縦性: 胴体長の違いにより、地上走行時の旋回性能に若干の違いがありますが、離着陸時の操縦性はほぼ同じです。
これらの違いは、A350-1000が長距離国際線に適しており、A350-900は国内線や中距離国際線に適していることを示しています。
地球の裏側まで飛べる航続性能!?A350のすごい点5選
エアバスA350は、最新の技術を取り入れた長距離国際線用の旅客機です。以下は、A350の特徴的な5つのすごい点を紹介します。

1. 燃料効率と環境性能
A350は、ロールス・ロイスのトレントXWBエンジンを搭載し、燃料消費量を大幅に削減しています。乗客1人あたり100キロメートルで約2.5リットルの燃料を消費し、従来型の機材と比べて約30%の燃料削減を実現しています。これにより、二酸化炭素排出量も大幅に低減され、環境に優しい運航が可能です。
2. 空力性能と騒音低減
A350は、空力的に最適化されたデザインを持ち、主翼や水平尾翼の形状が改良されています。また、A380で採用された「Droop Nose」と呼ばれる翼根側スラットを使用し、離陸性能と騒音を改善しています。さらに、最新の素材を使用することで、騒音フットプリントを最大50%低減しています。
3. 世界最長路線を担う超長距離航続力 A350-900ULR
エアバスA350-900には、燃料タンクを増設して航続距離を20%程度伸ばしたA350-900ULRと呼ばれる派生型が存在します。ULRは超長距離を意味するウルトラ・ロング・レンジの略です。
A350-900ULRは、およそ1万7,900kmの航続距離を実現しました。地球一周は約4万kmです。ある地点から直線距離で最も遠い地点までの距離は約2万kmであるため、1万7,900kmの航続性能があれば地球のほとんどの都市を直行便でつなぐことができます。
2025年現在、運行されている世界最長路線はシンガポール航空が運行するエアバスA350-900ULRを用いたシンガポールーニューヨーク(JFK)線の約1万6,000kmの路線です。飛行時間はおよそ19時間に設定されています。ほぼ丸一日、飛行機の中ですね。長いです。
4. 快適なキャビンと照明
A350は、広い窓や改善された気圧制御により、乗客の快適性を高めています。また、革新的な照明コンセプトを採用し、フライト中の照明を乗客のバイオリズムに合わせて調節することが可能です。
カーボン素材で湿度を高められる客室空間
エアバスA350の客室は、従来の飛行機よりも高い湿度を維持することができます。具体的には、A350は客室内の湿度を15%から20%程度まで高めることができます。従来のアルミニウム合金製の飛行機では、上空での客室の湿度は5%程度しかありませんでした。金属製の素材の場合、サビの懸念で客室内の湿度を上げることができませんでした。しかしカーボン素材を使用することでサビによる腐食を気にせずに、日常に近い快適な客室環境を実現することができました。
これにより、乗客は長時間のフライトでも喉の乾燥や肌のかゆみを抑えられ、快適な旅を楽しむことができるようになりました。
5. 先進的な素材と構造
A350は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を多用し、機体を軽量化しつつ強度を保っています。この技術により、燃料消費量を削減しつつ、安全性も向上しています。また、分割成形による部材変更が可能で、強度が必要な部位での部材変更も容易です。
これらの特徴により、A350は長距離国際線で高い評価を受けています。
エアバスA350の事故について
エアバスA350は、最新の技術を取り入れた長距離国際線用の旅客機で、安全性が高く評価されています。2024年1月2日、東京国際空港で発生した事故が、A350の初めての全損事故となりました。
羽田空港地上衝突事故
2024年1月2日、羽田空港の滑走路34R(C滑走路)で、日本航空のA350-941型機(JA13XJ)が海上保安庁のボンバルディアDHC-8-Q300型機(JA722A)と衝突しました。日本航空機には379人が搭乗しており、全員が脱出に成功しましたが、海上保安庁機の乗員6人中5人が死亡しました。
事故の詳細
- 衝突の状況: 日本航空機は着陸後に滑走路上で停止していた海上保安庁機に追突しました。衝突の瞬間、両機体は大きな損傷を受け、火災が発生しました。
- 脱出の成功: A350の全乗客と乗組員が無事に脱出できたことは、専門家からも「奇跡」と評価されています。最新の技術と乗務員の迅速な対応が成功に寄与しました。
- 機体の耐久性: A350はカーボンファイバー複合材(CFRP)で作られており、衝突と火災にも耐えたことが指摘されています。
調査状況
この事故について、運輸安全委員会が調査を進めています。事故の原因や詳細については、調査結果が公表されることを待つ必要があります。
この事故は、A350として初めての全損事故であり、B787も含めたCFRP機体としても初めての全損全焼事故となりました。今後、安全性の向上や事故防止策についての検討が進められることが期待されています。
エアバスA350XWBの諸元
モデル | 全長 | 全幅 | 全高 | 最大離陸重量 | 乗客定員(標準) | 航続距離 | エンジン推力 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
A350-900 | 66.8 m | 64.75 m | 17.05 m | 268 t | 314 名 | 15,000 km | 84,000 lb×2 |
A350-900ULR | 67.0m | 64.75 m | 17.05 m | 298 t | 161 名 | 17,600 km | 97,000 lb×2 |
A350-1000 | 73.79 m | 64.75 m | 17.08 m | 308 t | 350-410 名 | 14,800 km | 97,000 lb×2 |
A350-900F | 70.8 m | 64.75 m | – | 319 t | – | 8,700 km | 97,000 lb×2 |
Flightradar24を使ってエアバスA350をなめまわそう👅
Flightradar24で【飛行機を選択】すると【3Dビュー】という機能を見つけることができます。3Dビューを起動すると選択している飛行機がいる場所から見た景色を表示することができます。アングルを変えることもできるので面白い機能です。

【3Dビュー】を起動すると下の画像のように見えます。こちらは羽田空港を離陸した直後の日本航空のA350-900型機です。奥の方に見えるのはレインボーブリッジです。結構キレイに見えますよね。
左上には、見ている飛行機の情報を表示することができます。

ここでは、
- JAL507(日本航空507便)
- HND(羽田空港)→CTS(新千歳空港)
- 機種:A359(エアバスA350-900型)
- 高度:3,275ft (およそ1,000m)
- 対地速度:152kt (およそ281km/h)
- 垂直速度:+1,664fpm (=feet per minutes ,毎分1,664ftの上昇率)
これだけの情報がわかりますね。だからこの画像の景色は東京湾で高度1,000mくらいからの景色ということですね。
3Dビューでいろんな角度から飛行機を見てみよう!
アングルは立体的に変えることができます。

こんな大迫力のアングルも!⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン

真正面からも。

上からも。

下からも見ることができる。
アンテナ類まで再現されている!
3Dビューの飛行機は機体の細かなところまで再現されています。小さなアンテナやピトー管などが確認できます。

- Wi-Fiアンテナ:機内でWi-Fiでインターネットを楽しむために必要なアンテナ
- SATCOMアンテナ:衛星を使った通信機器で海の上など、地上の無線施設が届かない場所で役立ちます
- ELTアンテナ:不時着や墜落した場合に救難機に自機の位置を知らせるためのアンテナ
- VHFアンテナ:管制官など地上無線施設と交信するためのアンテナ。機体の上下に複数設置。
最新鋭機同士の比較!A350とB787のコクピット窓の違い

A350のコクピット。窓は6枚。

B787のコクピット。窓は4枚。
A350とB787は各社の最新鋭機だが、コクピットの窓の数に差があります。窓と窓の間には枠が必要ですが、枠があるとパイロットの視界をさえぎってしまいます。そのため窓の数が少ない方がパイロットにとってメリットが大きいことになります。一方で1枚の窓が大きくなると強度の問題がでてくるため、視認性とのバランスをとる必要があります。
A350の場合、コクピットの窓は従来機と同じ6枚が採用されています。またボーイングが開発中のB777Xも従来のB777と同じ6枚窓になっています。

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