Il-96はイリューシン96と読みます。
Ilは見にくいですが、イリューシン(Ilyushin)の頭の2文字で大文字の「I」と小文字の「L」の組み合わせです。
Il-96(イリューシン96)は、ロシアの航空機メーカー、イリューシンが設計・製造したロシアの代表的な長距離旅客機です。1988年に初飛行を果たしたこの機体は、ソビエト連邦の崩壊後のロシアにおける航空産業の象徴ともいえる存在です。ロシア大統領専用機として活躍しており、「空飛ぶクレムリン」の異名を持ちます。2024年6月19日の北朝鮮訪問にも使用されました。本記事では、Il-96の設計背景、技術的特徴、運用実績、そして現在の状況について詳しく解説します。
Il-96の設計 歴史的背景
Il-96の設計は、ソビエト連邦時代の1980年代に始まりました。当時、ソ連では「ソ連版エアバス」と言われるIl-86という機体が存在しましたが、航続距離が5,000kmと西側諸国の旅客機と比べあまりに短いものでした。
西側諸国の技術に対抗するため、新しい世代の旅客機を開発する必要性に迫られていたソ連は、特に長距離国際線での競争力を高めるため、最新技術を導入した新型機(ll-96)の開発が求められました。
開発の目的
Il-96は、ソ連の旧世代旅客機であるIl-62やIl-86に代わる新型機として設計されました。この新しい機体は、より高い燃費効率と航続距離、快適性を提供することを目的としていました。また、国際市場での競争力を持つことも重要視されました。
技術的特徴
機体構造
Il-96は、ワイドボディ機として設計され、4発エンジンを搭載しています。機体の全長は約55メートル、翼幅は約60メートルです。機体の大きさはB787-8に近い。しかしキャビンは広めに設計されており、胴体の直径は大型機B777に近い大きさを誇っています。機体全体の印象は少しずんぐりむっくりしているように見えます。
エンジン
Il-96には、ロシア製のアヴィアドヴィガーテリ PS-90Aエンジンが搭載されています。このエンジンは、推力、燃費効率、そして信頼性の面で優れた性能を発揮します。PS-90Aエンジンは、低燃費と低騒音を特徴としており、環境規制にも適合しています。
航続距離
Il-96は、標準的な航続距離で約13,000キロメートルを飛行することができ、海外へ要人を輸送する際にも十分な航続距離を有していると言えます。先代機であるIl-86の5,000kmという短い航続距離の反省から改良されたものでした。
これにより、モスクワからニューヨークや東京といった長距離路線を無着陸で飛行することが可能となりました。
キャビン設計
Il-96のキャビンは、広々としたレイアウトが特徴です。エコノミークラス、ビジネスクラス、ファーストクラスの3クラス構成が一般的で、それぞれのクラスにおいて快適な座席とサービスが提供されます。また、キャビンの静粛性にも配慮されており、乗客にとって快適なフライトを実現しています。
国際市場での競争
Il-96は、西側の旅客機、特にボーイング747やエアバスA340と競争するために設計されました。しかし、冷戦の終結とソビエト連邦の崩壊により、国際市場での競争は厳しいものとなりました。特にボーイング747-400など2人の操縦士で乗務できる航空機が増えてきた中で、3人の乗務員が必要なIl-96は大きなアドバンテージを背負っていました。結果としてIl-96は商業的に失敗した機体となってしまいました。
軍用および政府用
Il-96は、商業運航だけでなく、ロシア政府および軍用機としても運用されています。特にロシア連邦大統領専用機としての役割を担い、VIP輸送に使用されています。このバージョンは、特別な通信設備や防御システムを備えており、重要人物の安全な移動を支えています。
2024年6月18日からプーチン大統領の北朝鮮・ベトナム訪問時にもIl-96は使用されています。

生産の現状
Il-96の生産は、1988年から年間1-2機程度の小規模に続けられています。その後は減少しています。現在、Il-96の生産は限定的であり、新規受注は少数にとどまっています。
まとめ
Il-96は、ロシアの航空産業を象徴する重要な機体であり、その設計・技術はソビエト連邦時代からの伝統を引き継いでいます。長距離飛行に適したワイドボディ機として、多くの技術的特徴を持つ一方で、国際市場での競争力には課題があります。しかし、ロシア国内および特定のニッチ市場では、依然として重要な存在であり続けています。今後もアップグレードや技術改良を通じて、Il-96が持つポテンシャルを最大限に活かすことが期待されます。
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