天気をどうやって予想するの?天気予報の作られ方

天気予報がどうやって作られているかご存知ですか?

天気図を見ながら気象予報士の人が考えて〜、とか、

衛星画像を使って〜とか、

よくわからなかったら最後はゲタをけとばして決めるんだよ。とか、

いくつかの手法をイメージできますが、現代の天気予報は数学によって生み出されています。気温・湿度・気圧・風向風速からランニング中のおじさんが吐く息まで大気に影響を与えるありとあらゆる要素を数値化し、バーチャル空間で再現して未来の時間へ早送りすることができれば、正確な未来の天気を知ることができます。

これを、数値で天気を予測する手法であるため「数値予報」と言います。数値予報は現代の天気予報の主流の考え方です。この考え方を20世紀初頭に提唱したのが、イギリス生まれのリチャードソンです。

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「数学を使えば未来の天気がわかるんじゃね?」( ー̀ὢー́ )リチャードソン

リチャードソンは1881年10月11日、イギリスに生まれます。30代になったリチャードソンは1913年にイギリス気象局の研究所監督者になり数学を使って天気を予報する手法を研究しました。

当時は計算機もなく、自力での計算になりました。リチャードソンはある時刻から6時間先の予報を計算することにしました。その計算が終わったのはなんと計算を始めてから2ヶ月後。しかも正確な数値ではなかったそうです。6時間先の天気を計算するのに2ヶ月かかっていてはとても実用的ではありません。

しかしリチャードソンは「6万4000人で協力して計算すれば実際の天気の変化に予報が間に合うのでは…!!」と考えました。巨大なサッカー場を満員にするような人数を要するこの計画は現実的には実現できなかったため、リチャードソンの気象予報の構想は「リチャードソンの夢」と呼ばれました。

リチャードソンの夢はコンピューターの登場で現実に

リチャードソンが思い描いた気象の予測計算を行うためには、膨大な量の計算を素早く瞬時に行う必要がありました。これを実現させたのがコンピューターの登場です。現在、日本で使われているスーパーコンピューター「富嶽(ふがく)」は1秒間に44京2,010兆回という膨大な計算ができます。これは、日本人1億2000万人全員が電卓を使い、1秒間に1回、24時間不眠不休で110年間計算してやっとできる計算量を、「富岳」だと“たったの1秒” で完了できるということになります。

人間の力では到底不可能な膨大な量の計算を行えるようになったのは、スーパーコンピューターのおかげです。スパコンの登場によりリチャードソンの夢が現実となり、現代の精度の高い数値予報ができるようになりました。

数値予報はコンピューター上に仮想の地球と大気を作って計算する

数値予報ではコンピューターのバーチャル空間に地球と大気を設定して、大気を水平面と高さで格子状に区切っていきます。それぞれの格子には、世界中の観測点から集めた気温や風などの観測データを割り当てます。その値が時間の経過とともにどのように変化するかを計算し、予報を行っています。全球の1日先の天気は10分程度で予測することができます。

数値予報に使われる全球格子の図
数値予報のイメージ (気象庁HPより)

上の図のような格子で空間を区切り、それぞれに気温・湿度・風の情報を与えます。この格子間隔は狭く細かい方が精度の高い気象予報が行えますが、その分、計算量が膨大になるため、計算にかかる時間とコンピューターの計算速度とのバランスを取る必要があります。

悲報:あなたのくしゃみが原因で竜巻が発生しました

「バタフライ効果」という言葉をご存知でしょうか?

ブラジルで蝶が羽ばたいたことによる空気の動きが、テキサスで竜巻を引き起こすことがある、という説です。蝶の羽ばたきは小さな風を生み出す程度で、地球全体の大気のレベルで見れば本当に極々小さな気流にしか見えません。しかし小さなドミノが少しずつ大きなドミノを倒すことで巨大なドミノを倒すことができるように、蝶の羽ばたきでできた小さな風が、少しずつ大きな気流になっていき、数千km離れた場所で竜巻を起こす…かもしれません。

我々のくしゃみも同じです。さっきあなたがしたくしゃみによってできた空気の流れが巡り巡って竜巻や台風を引き起こすきっかけになっているかもしれないのです。もしその竜巻で死者が出て、あなたのくしゃみと竜巻の因果関係が証明されたらあなたは過失致死傷罪で逮捕されるでしょう。

話がだいぶ逸れましたが、大気現象を寸分の狂いもなくコンピューターの仮想空間で再現し、今後の天気を予測することがいかに難しいことかをお伝えしたかったのです。本当に正確な気象予測をするためには、この後、だれがいつどこでくしゃみやオナラをするかなどのありとあらゆる未来に起きる要素をコンピューターに入力する必要がありますからね。もう気象予報のレベルの話ではなくなりそうです。

気象予報の精度は日々上がっていますが、完全に寸分違わず予測することはおそらく不可能なのでしょう。

精度よく予測できるのは3日先まで

通常、天気予報は予報期間が長期になるにつれて、予測に誤差が生じやすいです。1日先の天気は当たりやすいですが、2週間先、1ヶ月先になると予報精度は落ちていきます。

数値予報では、入力した初期の値と現実の状況の誤差が最初は予報に影響のないほど小さなズレでも、計算を繰り返していくにつれてそのズレが許容できないほどに大きくなっていきます。この現象を「カオス」と言ったりします。

数値予報の初期値

数値予報には初期値というデータを入力しなければいけません。初期値には気温や湿度、風向風速など大気を表すさまざまな数値を入力しますが、その数値は観測されたデータをそのまま入力すればいいわけではないんです。

数値予報モデルでは格子点が地球大気にメッシュ状に張り巡らされていますが、格子点に入力されている数値の精度は場所によって異なるのです。それは観測地点の設置数が場所により異なるためです。陸域には観測所を設置しやすいですが、海上には観測所を設置しにくいため、陸域の方が気象データの観測精度が高いのに対して海上の観測精度は相対的に低くなります。

数値予報モデルでは、太平洋の真っ只中の観測所のない場所でもモデルの格子点がそこにあれば、実際の大気を想定した数値を入力してあげる必要があります。これをデータ同化と言います。観測地点の少ない海上では、陸域に比べ数値の精度が悪くなりやすいです。

関連ワード
  • 格子点値(GPV: Grid Point Value)…格子点に入力される数値。観測や予報された数値。
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