2023年12月21日の日本列島
下の映像は2023年12月21日正午の日本周辺の衛生画像です。気象予報士の勉強をしていると興味深い映像です。
日本海に気象予報士試験で出題されうる気象現象を2つ見つけることができます。
札幌の北の海上に「ポーラーロウ(極低気圧)」という低気圧の渦🌀と石川県金沢市に吹き込むような「JPCZ(日本海寒気団収束帯)」です。
- ポーラーロウ:北海道の西に見える低気圧。冬の中高緯度帯の海上で発生し直径200km-1000kmの小さめ🌀
- JPCZ:大陸から能登半島の西へ続いている西風と北風が衝突しているライン
ポーラーロウ(極低気圧):北海道の西に見える低気圧
ポーラーロウは、冬の中高緯度帯の海上で発生する直径200km-1000kmまでの小さい低気圧です。(参考として北海道の南北の直線距離はおよそ400km)
ポーラーロウは、「極低気圧」と呼ばれるだけあり、基本的には高緯度帯に発生する低気圧です。北緯45度程度の日本周辺で発生するのは、例外的な発生場所と言えそうです。ポーラーロウが発生する場所は下の図の通り。
ポーラーロウが発生する場所
- バレンツ海、ノルウェー海、北海、グリーンランド海:欧州、北緯55度以北
- ラブラドル海:北米、北緯60度
- ベーリング海:アラスカ周辺、北緯50度以北
- 南極海:南緯60度以南
- 日本海:北緯40度
中緯度の日本海でポーラーロウ🌀が発達するのは、冬のシベリアから吹いてくる冷たく乾いた季節風が、比較的暖かい日本海上に吹くことで、対流活動が活発になるためです。
ちなみに2024年12月21日のシベリア大陸の地表の気温は-30℃に対し、日本海上の空気の温度は0℃前後でした。-30℃も0℃も普通の感覚からするとどちらも冷たいですが、温度差は30℃もあり、人間の体温からすると60℃超えの熱湯風呂に入るくらいのインパクトがあります。下に暖かく湿った空気があり、上に冷たく乾いた空気があると「大気が不安定な状態」になるため活発な対流活動が起きます。
小さくても強風や大雪を伴い「ミニ台風」と呼ばれるため、災害に注意が必要です。
ポーラーロウの発生場所として「凍っていない水上」という条件は重要なポイントです。凍っている場所では、水蒸気の供給を受けられず、雲を作ることができないためです。
JPCZ(Japan sea Polar air mass Convergence Zone:日本海寒気団収束帯)
JPCZは、冬の大陸からの季節風により日本海上にできる風の収束帯です。
こちらも西高東低の気圧配置による季節風が関わっています。大陸から日本列島の方へ吹く北西からの季節風が、北朝鮮にある長白山脈で二手に分かれ、日本海上で二つの気流が収束することにより雲の帯ができます。気象において風が収束したり、山などにぶつかるところでは強力な雲が発生します。
線状降水帯と発生メカニズムが似ていることから線状降雪帯とも呼ばれます。
雲の帯は列島の日本海側に豪雪をもたらし、大きな災害をもたらします。
長白山脈の中で白頭山(2,744m)でこれらの山々にぶつかった気流が日本海上で収束します。JPCZの雲の高さも3,000m程度と対流圏の下層にとどまる程度の高さです。
地球温暖化が進むとJPCZもより凶悪になる👿
JPCZの発生には、日本海から供給される水蒸気が必要です。地球温暖化で海水の温度が上がると、日本海上でより多くの水蒸気が発生しやすくなり、より強いJPCZが列島に大雪をもたらすと考えられます。
- JPCZは冬の日本海上で作られる大陸からの寒気の収束帯
- 大雪をもたらす
- 雲の発生高度は3,000m程度で対流圏下層の現象
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