台風10号の動向が気になりますね。
今日も気象庁から発表された短期予報解説資料を見ていきましょう。
短期予報解説資料24年8月29日03時40分発表
1.実況上の着目点
① 非常に強い台風第10号が、枕崎市の南南西の海上を北上。台風周辺では、九州南部や 奄美地方では、猛烈な風が吹いて、うねりを伴った猛烈なしけとなっている所がある。鹿児島県では、暴風と波浪の特別警報を発表している。
枕崎市は鹿児島県の南西、薩摩半島に位置しています。
気象情報でよく出てくる地名なのでこの機会に場所を覚えておきましょう。
「数十年に一度」という言葉が強烈ですが、「各地域にとって数十年に一度」という意味であるため、全国的に見れば各種の特別警報は年に1-2回程度発表されているそうです。
② 南西諸島や西~東日本の太平洋側では、台風本体の発達した雨雲や台風周辺及び太平洋高気圧縁辺からの暖かく湿った空気の影響で、大気の状態が非常に不安定となっており、雷を伴った非常に激しい雨や激しい雨が降っている。
8月27日夜遅く(午後10時ごろ)に、愛知県蒲郡市で大雨による土砂崩れで木造住宅が巻き込まれる被害がありました。現地では、26日午後4時の雨の降り始めから27日の夜11時までの間に138.5ミリ、平年の8月1か月分を上回る雨が降ったそうです。当時、台風から700km以上離れた愛知県でこのような大雨が降ったのは、台風と太平洋高気圧の南からの風が、太平洋の暖かく湿った空気を日本列島にもたらしたためです。
台風の時は、台風本体の動向にばかり目が行きがちですが、このように台風から遠く離れた場所でも大きな影響があります。まだ台風本体が来ていないからといって、油断できません。
このように台風から遠く離れた場所で大雨が降ることを「前方先駆的降雨現象(PRE)」という名称で呼ぶそうです。(さっきテレビで観ました)
台風本体の発達した雨雲の影響により、九州南部の太平洋側では、局地的に猛烈な雨が降っている所がある。九州南部、静岡県、愛媛県では、土砂災害警戒情報を発表している。
③ 前線が日本海から東北地方を通り、千島近海にのびている。前線に向かって太平洋高気圧から暖かく湿った空気が流入し、大気の状態が非常に不安定となっている。
2.主要じょう乱の予想根拠と防災事項を含む解説上の留意点
① 1 項①の台風は、引き続き北上し、30日にかけて九州に上陸し、四国付近まで進む。この台風の影響により、奄美地方や西日本では、引き続き、30日にかけて猛烈な風が吹いて、うねりを伴った猛烈なしけとなる所がある。
鹿児島県では 29日は暴風やうねりを伴った高波、高潮に最大級の警戒。奄美地方では 29 日は、西日本では 30 日にかけて、暴風やうねりを伴った高波に厳重に警戒。また、台風本体や台風周辺及び太平洋高気圧縁辺からの発達した雨雲がかかり、奄美地方では29日は、西日本~東日本の太平洋側では 31 日にかけて、雷を伴った非常に激しい雨や猛烈な雨が降り、大雨となる所がある。
土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒。落雷や竜巻などの激しい突風に注意。また、九州北部地方では29日夜にかけて、九州南部では 30日午前中にかけて、四国地方では30日夜にかけて、引き続き、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性がある。
また、台風の動きが遅いため、猛烈な風や猛烈なしけとなる時間が長くなり、総雨量が多くなるおそれがあることに留意。
② 1 項③の前線や暖かく湿った空気の影響により、大気の状態が非常に不安定となり、雷を伴った激しい雨が降り大雨となる所がある。東北地方では 31 日にかけて、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒し、落雷や竜巻などの激しい突風に注意。
3.数値予報資料解釈上の留意点
総観場は GSM を基本、量予想や降水分布は MSMや LFMも参考。台風については、西日本へ上陸した後の予報の不確実性が大きい。最新の台風情報を参照。
4.防災関連事項 [量的予報等]
①雨量(06 時からの 24 時間):九州南部 600、四国・九州北部 400、 東海 300、関東甲信・近畿 200、伊豆諸島・中国 120mm。
②波浪(明日まで):九州南部 9、奄美 8、四国・ 九州北部 7、東海・近畿 6、関東甲信・伊豆諸島・中国 4、沖縄 4、東北 3m。
③高潮(明日まで):西日本で警報基準を超過する所がある。
5.全般気象情報発表の有無
「台風第 10 号に関する情報(総合情報)」を5時頃に発表予定。
アジア地上解析(ASAS)天気図を見てみよう!8月29日0000UTC
気象庁はアジア地上解析(ASAS)という地上天気図を発表してくれています。日本周辺だけでなくアジア大陸から北西太平洋までの広範囲をカバーしており、国外の気象機関や船舶・航空関係者も利用しています。
そのため天気図は英語や協定世界時(UTC)で表記されています。
九州の南に台風があるのがわかりますが、さらに南の方に英文が書かれています。
書かれている文を見ていきましょう。
情報文
T 2410 SHANSHAN(2410)
960hPa
32.1N 130.3E PSN GOOD
NNE 09KT
MAX WINDS 75 KT NEAR CENTER
GUST 105 KT
OVER 50 KT WITHIN 60 NM
OVER 30 KT WITHIN 210 NM
意味
台風 24年10号 名称:サンサン
中心気圧960hPa
位置:北緯32.1度 東経130.3度 正確な位置
北北東へ9ノットで移動
中心付近の最大風速75ノット
最大瞬間風速105ノット
60マイル以内は50ノット以上の風
210マイル以内は30ノット以上の風
このように台風や発達した低気圧の詳細な情報を記載してくれています。3行目のPSNはPosition(位置)の略だったりと少しクセはありますが、見慣れてしまえばすらすら読むことができます。
気象予報士試験の実技問題では、情報文の意味を問われる問題が必ずといっていいほど出題されますので読めるようにしておきましょう。
ASAS天気図を1日1回見る癖をつければ、数週間のうちに見慣れることができると思います。
台風と前線の関係を見てみよう
最近はVentuskyというサイトで気象を見ることが多いです。今回は台風10号と日本海から東北東へ伸びる前線の関係を見てみましょう。
こちらは8月29日17時の地上の風と雲の状況です。九州にある台風の反時計回りの回転と、東にある太平洋高気圧の時計回りの回転のはざまのエリアで、暖かく湿った強い南風が日本列島と北側にある前線に向かって吹いています。
そして前線に沿ってきれいに雲の帯が出来上がっているのがわかります。台風がもたらす暖かく湿った南風が前線を刺激して大雨を降らす危険な状況です。今後も天気の動向に注意し、山沿いに暮らしている人は土砂崩れなどを警戒し、早めに避難所へ行くようにしましょう。
台風の時に飛行機は飛んでいるのか?
台風のある場所を飛行機は飛ぶことができるのかは、気になりますよね。
台風10号が九州にあるときに飛行機がどうしているのかちょっと見てみました。
左のflightradar24の画像は、夜の20時ごろで最終便が飛び交う時間だと思いますが、大空港である福岡空港を含めてほとんどの飛行機が九州地方を飛んでいません。各航空会社が九州地方の空港を飛ぶ便を欠航にしたので当たり前と言えば当たり前ですが。
台風の近くを飛んでいる飛行機として福岡県の北側を飛行しているCKK221という日本上空を通過する便を見つけました。この飛行機は台風の影響を受けていないのでしょうか。
CKK221が飛行している高度を見ると29,000ft、つまりおよそ高度9,000mを飛行していました。台風の雲がこの高度に達していなければ、飛行機は台風の影響を受けずに飛行できていそうですよね。
そこで右側のWindyの画像を見てみましょう。こちらも20時ごろの九州地方の画像で、長崎県と熊本県の間に台風の中心位置があります。周りには雲が広がっており、色によって雲のてっぺんの高度を表しています。
例えば、九州の東側に見える足の形🦶のような赤い雲のエリアは、雲の頂上が1万2,000mを超えています。先ほどのCKK221✈️の高度が9,000mですから、この高度のまま赤いエリアに入ってしまったら台風の積乱雲の中に突っ込んでいくことになってしまいます。積乱雲の中は、乱気流や雷が発生しており、飛行機が破壊されるほどのダメージを受けることがあるため、通常は避けて通ります。
一方、CKK221✈️が実際に飛行している場所は、赤色のエリアを避けて、緑から青色のエリアを狙って飛んでいるように見えます。緑色のエリアは雲頂高度が7,000m程度の高度であり、CKK221の飛行高度である9,000mなら余裕で雲を飛び越えることができます。雲の上空はおそらく台風の影響をあまり受けることなく飛行することができていると思われます。
このように台風直下の飛行場への離着陸は難しくても、台風周辺の空域は場所と高度によっては、台風の影響を受けずに飛行することができそうですね。
以上。
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