B737は日本の国内線の主力機材で空港に行ったことがある人なら誰もが一度は見たことがある飛行機だと思います。日本に限らずB737は世界で最も売れた旅客機として世界中どの地域でも見かけることができます。
全日空・日本航空をはじめ、スカイマーク・エアドゥ・ソラシドエア・スプリングジャパンなど、ほとんどの航空会社が定期便としてB737を使用しています。
機体の長さは派生型によって多少異なりますが、30m-40m程度で旅客機の中では”小型機”というカテゴリーになります。乗客数は150人-200人程度
日本には令和2年末時点で165機のB737が登録されています。日本の旅客機のおよそ4機に1機の割合を占めます。
さて小型で航空会社の規模を問わず扱いやすいB737ですがその特徴とはどんなものがあるでしょう。空港に行った時に見分けることができるようその特徴を知っておきましょう。
B737を見分ける方法
B737は旅客機の中では小さめの機体
B737は他の飛行機と比べて小さめです。地方路線をつなぐ役割を担う機体で、150人程度の旅客を運ぶことができます。地方空港は設備が脆弱で大規模空港ほどの長い滑走路を備えていないことが多いですが、B737は地方の短い滑走路でも離着陸ができる身軽さを持っています。
垂直尾翼にドーサルフィンがついている
B737はサイズが同じクラスのエアバス機A320と見間違えやすいです。A320と見分けるポイントは垂直尾翼を横から見た時に坂が2段階になっている点です。
垂直尾翼のてっぺんから滑り台のように滑った時に途中から浅い坂に変化するのがB737です。この垂直尾翼の根元のなだらかな部分を「ドーサルフィン」と呼びます。これは重量などの関係から垂直尾翼をあまり大きくすることはできないが、飛行中の安定性を得たいときに設定されます。
メインギアは一列
飛行機の前方のタイヤ部分のことを”ノーズギア”、後ろ側を”メインギア”と言います。B737のメインギアは1列となっています。B777など大きい旅客機は、重量を支えるためにメインギアが3列になっています。
ただし、A320などの他の小型機でもメインギアは1列になるため、これだけでB737かを判断することはできません。
メインギアをたたむことができてもむき出しの状態で飛行する
旅客機のタイヤは飛行中は胴体下部に格納されるのが一般的です。これは機体のでこぼこをなくし、飛行中の空気抵抗を減らすためです。
多くの旅客機では、タイヤはカバーと共に機体に畳まれるので飛行中はタイヤを見ることができません。しかしB737の場合、タイヤは機体に畳まれてもカバーがなく、下から見ると機体に収容されているタイヤが丸見えの状態です。
B737のように小型機の中にはタイヤをたたんでも格納扉で覆わない形式のものがあります。タイヤが剥き出しだとタイヤやブレーキに風を当て冷却することができるメリットがあります。
飛行機のタイヤやブレーキは地上走行をしている間に温度が上がってしまい、タイヤが破裂する原因になったり、ブレーキが本来の制動性能を発揮できなくなります。特に離着陸を頻繁に繰り返す短距離路線に利用されているB737のような小型機は、タイヤ周辺の温度をさげやすい格納方法だと言えますね。
エンジンがおむすび型
B737のエンジンを飛行機の真正面から見ると円の形ではなく、まるの下側を潰しておむすびのような安定感を出しているような形であることがわかります。
これはB737の大きな特徴です。このような形になったのは翼にぶら下がっている状態のエンジンが地面に接触することがないようにするためです。
最新モデル B737MAX
B737は初代モデルが1967年に初飛行して以来、時代のニーズに合わせながら進化をし、半世紀以上に渡り生産され続けてきたベストセラー旅客機です。現在、生産されているモデルはB737MAXです。
B737としては4世代目の機種であり、B737MAXの中にも座席数に応じて
- B737-7
- B737-8
- B737-9
- B737-10
と4つの派生型が存在します。
B737MAXは従来の737に新技術を加えた機体
B737MAXは従来型の737の機体にB787の開発で得た最新技術を盛り込んで作られています。エンジンの後ろがギザギザになっているのは騒音を軽減するためにB787で採用されたシェブロンエンジンの技術です。
B737MAX8型機
B737MAX8型機
従来型のB737に見られる特徴である、ドーサルフィンやおむすび型のエンジンをそのままに、シェブロンノズルやスプレットシミタールウィングレットなど目新しい技術を採用しています。
B737MAXの事故について
B737MAXの名前が知れ渡ったのは、不本意ながら2018年と2019年に立て続けに発生した墜落事故の影響だったかもしれません。
- ライオン・エア610便墜落事故 (2018年10月29日 インドネシア,ジャワ海,搭乗者189名全員死亡)
- エチオピア航空302便墜落事故 (2019年3月10日 エチオピア,アディスアベバ,搭乗者157名全員死亡)
この2つの事故は、B737MAX型機がもつ「機首が上がりやすい機体特性」をカバーするシステム(MCAS)に問題がありました。MCASが操縦士の意思に反して機体を下降させる操作を行うことがあり、これが2つの墜落事故につながりました。
B737の諸元
モデル | 初飛行 | 全長 (m) | 幅 (m) | 最大離陸重量 (kg) | 最大航続距離 (km) | 座席数 | エンジン |
---|---|---|---|---|---|---|---|
737-100 | 1967年4月9日 | 28.65 | 28.35 | 50,300 | 2,850 | 85-130 | Pratt & Whitney JT8D-7 |
737-200 | 1967年8月8日 | 30.53 | 28.35 | 60,555 | 4,150 | 97-130 | Pratt & Whitney JT8D-9 |
737-300 | 1984年2月24日 | 33.40 | 28.88 | 62,820 | 4,200 | 126-149 | CFM International CFM56-3 |
737-400 | 1988年2月19日 | 36.45 | 28.88 | 68,040 | 4,000 | 147-188 | CFM International CFM56-3 |
737-500 | 1989年6月30日 | 31.00 | 28.88 | 60,555 | 4,440 | 110-132 | CFM International CFM56-3 |
737-600 | 1998年1月22日 | 31.20 | 34.32 | 65,317 | 5,648 | 108-132 | CFM International CFM56-7B |
737-700 | 1997年2月9日 | 33.60 | 34.32 | 70,080 | 6,370 | 126-149 | CFM International CFM56-7B |
737-800 | 1997年7月31日 | 39.50 | 34.32 | 79,015 | 5,765 | 162-189 | CFM International CFM56-7B |
737-900 | 2000年8月3日 | 42.10 | 34.32 | 85,139 | 5,925 | 178-215 | CFM International CFM56-7B |
737 MAX 7 | 2018年3月16日 | 35.56 | 35.92 | 80,286 | 7,130 | 138-172 | CFM International LEAP-1B |
737 MAX 8 | 2017年1月29日 | 39.52 | 35.92 | 82,191 | 6,570 | 162-200 | CFM International LEAP-1B |
737 MAX 9 | 2017年4月13日 | 42.16 | 35.92 | 88,314 | 6,570 | 178-220 | CFM International LEAP-1B |
737 MAX 10 | 2021年6月18日 | 43.80 | 35.92 | 89,843 | 6,110 | 188-230 | CFM International LEAP-1B |
以上、B737の見分け方について解説してみました。
なかなか最初は飛行機を見分けるのは難しいですよね。
でも違いを意識して見ていくうちに少しずつ見分けられるようになると思います。
飛行機の型式を見分けられるようになっても日常生活には役に立たないかもしれませんが、飛行機が好きだったり、飛行機に関係する仕事をしたいと思っている人は知っていて損はないと思います。
飛行機の型式を知って空港を今までの何倍も堪能しましょう!
B737はMAXで最終形??
B737シリーズは、1967年の初飛行から半世紀以上に渡り生産され、これまで11,000機以上が製造された、商業航空機で最も成功したモデルです。世界中の多くの航空会社で利用されてきた大ベストセラー機ですが、個人的にB737は、B737MAX型機を最後にシリーズの生産を終了してしまうんじゃないかと思っています。
その理由として以下の3点をあげていきます。
- B737MAXの墜落事故で露呈した基本設計の限界
- パイロットの機種移行をしやすくする流れ
B737MAXの墜落事故で露呈した基本設計の限界
B737の基本設計は1960年代に遡ります。当時の設計思想に基づいて作られた737は、その後50年以上にわたって時代のニーズに合わせて何度も何度も改良を重ねてきましたが、根本的な構造は変わっていません。特に、低い地上高という特徴は、737の象徴的な要素でした。
上のXの写真は、B737と輸送能力がほぼ同じクラスのライバル機、エアバスA320を同じ縮尺で左右に並べた画像です。左のA320は脚の長さが長く、胴体・主翼が全て高い位置にあるのに対して、右のB737は脚の長さが短く、胴体も主翼も地面に近い位置にあります。
B737は低い主翼に対応して、エンジンを地面に擦らないように下が平たいおにぎり型エンジンになってるね🍙
搭乗のしやすさ、荷物の積載のしやすさを考えて低く機体を設計
B737が登場した1960年代は空港設備が脆弱で、特に地方空港は今は当たり前のようにある搭乗橋(ボーディングブリッジ)や、荷物を積むためのハイリフトローダーもありませんでした。そのような環境で、人の乗り降りや荷物の積み下ろしの負担を減らすためには、飛行機の高さは地面に近い方が有利です。B737はそのような設備が乏しい空港でも対応できるように設計された機体です。
低い機体設計によりエンジンの大きさに制約を受けることに…
近年の航空機は、燃料効率の良いファン径の大きなエンジンを搭載する傾向にあります。しかし、もともと機体が低く設計されているB737は、大きなエンジンを積むと地面とのクリアランスを確保できません。
B737は機体を改良してエンジンを大きくするたびに様々な工夫をしてきました。おにぎり型エンジンもその一つです。ファン以外のエンジン周りの部品をエンジンの下側から横側に配置を変えることで円形から横にふくらんだおにぎりのような形になりました。
しかし時代とともにより燃料効率の良いファン径の大きなエンジンが求められるようになり、最新のB737MAX型機では、先代のB737NGのエンジンのファン径155cmより21cm大きい、ファン径176cmのエンジンを採用しました。
エンジンは主翼にぶら下がっている状態なので、エンジンのファン径が大きくなった分だけ、地面に近づくことになります。B737MAX型機の開発では、エンジンをエンジンを地面から距離をとる工夫が必要になりました。
エンジンの取り付け位置を従来より前方へ
B737MAX型では、エンジンの地上とのクリアランスを確保するためにエンジンの取り付け位置を従来よりも前方に変更しました。
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