飛行機ごとパラシュート?究極の安全装備

こんにちは。

みなさんは飛行機に乗る時、「もし上空で機体が故障して無事に地上に降りられなくなったら…」なんてことを一度は考えたことありませんか?

飛行機事故のドキュメンタリー番組で空中で機体が壊れて空港まで到達できなくなっている飛行機を見るたびに「機体は捨てて人間だけでもスカイダイバーみたいに降りればいいじゃないか!」というアイディアは必ずといっていいほど出てきます。今日はそんな素朴なアイディアについて考えていきましょう。

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目次

①パラシュートで逃げることが安全とは限らない

旅客機に乗ったことがある人の中に飛行機からパラシュートで降下することを経験したことがある人はほとんどいないですよね。

そんな素人のお客さんたちに、飛行機がトラブルに見舞われて大変な時にパラシュートをきちんと装着させて限られた時間の中で安全に飛行機から離脱させられるのかというと難しそうです。

B777などの大きな機体になれば500人ものお客さんが乗っていることもあります。

お客さん全員にパラシュートを適切に着けさせて「この飛行機は危険な状態のため今からパラシュートで逃げます」と説明してスムーズに動けるお客さんが果たしてどれだけいるか。

500人が適切にパラシュートを装備できたとしていざ飛び降りる段階になったとしましょう。

機外に出るためのドアは後方のいくつかに限られます。エンジンより前方から機外に飛び出すとエンジンに吸い込まれる恐れがあるためです。

限られたドアから機外に出るための時間が1人あたり5秒かかるとして、500人全員が機外への脱出を完了するのにおよそ40分以上かかります。それだけの間、安全に飛行できる余裕が飛行機にあるのであれば最寄りの飛行場に辿り着けることもあるかと思います。

また飛行機を無事に離脱できたとして、無事に地上に着地できるか。海上などの過酷な環境に降りた場合、救助が来るまでの数時間から数日間、命を取り留めていられるかというハードルがあります。冷たい海の場合、数時間で低体温症で死亡する危険性もあります。

パラシュートで脱出するという選択肢は必ずしも全てを解決できるわけではないのです。

②パラシュートを積載するコスト

通常の旅客機にはパラシュートというものは搭載されていません。「えー、実際に使うかどうかは置いておいて人命を守るために積んでいても良くない?」という声がありそうですよね。

でももしパラシュートを積載すると、燃料などのコストが高くなり飛行機のチケット代にも間違いなく響きます。

陸上自衛隊が扱っているパラシュートを例にすると重量が1人分で18kgあります。500人分を積載するとなるとそれだけで9,000kgになります。

B777の機体のみの重量がおよそ160,000kgであることを考えるとパラシュートを装備するだけで全体の5%強もの重量が増加します。

大したことないじゃんと思う人もいるかもしれませんが、この5%の重量増が飛行機の燃費を大きく損ないます。しかもパラシュートは安全に飛行できているうちは、全く必要のない「お荷物」です。

場所もとり、その分客室が狭くなり快適性も損なわれます。

特に最近は飛行機で死亡事故に遭遇する確率はおよそ400万回のフライトで1回となっており、限りなく低い確率になっています。

一日1回、飛行機に乗る人が一万年かけて遭遇するかどうかの確率です。

399万9999回のフライトではパラシュートはただのお荷物だった上に、たった一回の事故でも果たしてパラシュートが解決策になりえるのかという疑問が残ります。

これらを考えるとパラシュートが必要な状況は恐ろしく低いことがわかると思います。コストを考慮すれば積載しないという結論に至ることは理解できます。

③飛行機ごとパラシュートでおりればいいじゃない!

ここまで飛行機にパラシュートを積載するデメリットばかり書いてきましたが、空を飛んでいる人の命を守るために最終的にパラシュートが有用なことも事実です。

そんなパラシュートの有用性を活かし、飛行機ごと安全に地上に下ろすという発想の飛行機が世の中にはあります。

アメリカのシーラス・エアクラフト社が開発したシーラスSRシリーズにはCAPS(キャップス)と呼ばれる安全機能が搭載されています。

これは機体が何らかのトラブルに見舞われて不時着が避けられなくなった時に、キャビン天井にあるハンドルを引くとパラシュートが射出されて機体を水平に保って降下させる機能です。

この機体は5人乗りの小型機で、機体ごとパラシュートに吊られて地上まで安全に降りることができます。シーラス社のサイトによると2017年までにこの機能の作動実績が71回あり、これまでに146人の生還者がいて死者は0人だそうです。

機体もパラシュートで安全に降りれるため、地上の人や物を傷つける可能性も低くなりなります。

生還率の高さから日本でも航空大学校などの操縦士育成の現場で使用されている機体です。

残念ながらみなさんが乗るような旅客機などでは機体が大き過ぎて装備できない機能だと思います。

出典:CIRRUS JAPAN HPより

 

今回は以上になります。パラシュートも一長一短ですよね。でも今の飛行機は本当に安全なので自分で空中に脱出するよりも機体とパイロットさんを信じた方が生還する確率は高そうです。


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