飛行機にはネズミが乗ってる!?いざという時のラムエアタービン

みなさんは飛行機がどうやって電力を得ているか知っていますか?

飛行機の中はライトもあるし液晶画面もある。スマホの充電もできるしWi-Fiもあります。もちろんパイロットの無線交信や飛行機の操縦にも電気が使われています。

この電気はどこから来るのか。答えは翼の下についているエンジンです。飛行機も車と同じでエンジンに取り付けられている発電機から電力が供給されます。

ではもし空中でAPUを含むすべての発電機が止まってしまったらどうするのか?

今回は飛行機に搭載されているラムエアタービンという非常用発電機について見ていきます。

タイトルがよくわからないと思うので先に説明するとラムエアタービン(Ram-Air Turbine)はその頭文字からRATと略されます。RATからネズミを連想してみました。

目次

ラムエアタービンとは?

ラムエアタービンは飛行機の機構の一つなのですが、普段は空港に行ってもお目にかかることはできません。

なぜならこれを使うときはその飛行機は高確率で緊急状態であるためです。

ラムエアタービンを使う時は飛んでいる飛行機のエンジンが全て使えない状態だと考えられます。

普段、飛んでいる飛行機はエンジンから前に進む推進力を得るとともに電気も作っています。

この電気は客室のライトやコンセント、もっと重要なところでは飛行機の操縦系統・無線・ナビゲーションシステムとありとあらゆるところで使います。

電気がなければ飛行機を安全に操縦することはできないと言ってもいいでしょう。

エンジンが全て停止してしまうと電気が作れなくなってしまいます。

こんな時に使うのが、RAT(ラムエアタービン)なのです。

ラムエアタービンは風車の形をしていて飛行機が前から風を受けていることを利用し風力発電を行います。

空中でエンジンが停止している時に胴体の脇から、「カパッ!」と出てきて風車が回転して発電します。

これで操縦や無線など飛行のための最低限の動力を得ることはできるのです。

そもそもエンジンが止まっている状況って大丈夫なの!?って思いますよね。

確かにエンジンが全て止まるのは大丈夫な状態ではないのは間違いありませんが、飛行機は翼さえ無事なら真っ逆さまに即墜落には陥りません。

パイロットが飛行機を操縦できる状態であれば、たとえすべてのエンジンが止まってしまっても滑空状態でゆっくりと降下していき最寄りの飛行場へ安全に着陸することも可能なのです。

RAT使用実例「エア・トランザット236便滑空事故」

現代の航空機エンジンは性能が進歩したこともあり、すべてのエンジンが停止することは極めて稀です。

そのためラムエアタービン(RAT)の使用事例は本当に限られています。

ここではRATを実際に使ったエア・トランザット航空236便の事故を紹介していきましょう。

エア・トランザット航空とはカナダの航空会社で2023年現在も運行しております。

この事故はカナダのトロントからポルトガルのリスボンへ向かう大西洋を東へ横断する便で発生しました。

飛行機の機体はエアバスA330。乗員乗客は306名が搭乗。

2001年8月23日、エアトランザット236便はカナダ・トロントの空港を離陸。

離陸してから4時間半が経過し大西洋上を飛行していた頃、飛行機の左と右の燃料タンクの残燃料がアンバランスであるという警報が作動しました。

パイロットは左と右のタンクの残燃料を均等にするため、左右のタンクを分離しているバルブを開くことで多い方から少ない方へ燃料を流しバランスを取ろうとしました。

するとコクピットで表示される残燃料がみるみる減少していきました。

残りの燃料では目的地リスボンまで到着することは不可能と判断し、パイロットはポルトガル本土の手前1000kmの位置にあるテルセイラ島のポルトガル空軍基地に目的地を変更します。

目的地を近くの飛行場に変更したものの、燃料は急速に減っていき離陸から5時間20分後、燃料切れにより2つあるエンジンのうち右側のエンジンが停止してしまいました。

右のエンジンが停止してから13分後、左側のエンジンも燃料切れで停止してしまい、この時点から236便は滑空状態となってしまいました。

エンジンが停止しても翼がある限り飛行機はすぐに地表面に激突ということにはなりません。

236便は滑空状態のまま最寄りのポルトガル空軍基地に向かいます。

この時に活躍したのが、RAT。すなわちラムエアタービンです。

パイロットたちはラムエアタービンを起動させ、無線と操縦に必要な電力と油圧を得て無事にラジェス航空基地に着陸することができました。

この事例はいざという時のラムエアタービンの有用性を示す貴重なものでした。

ちなみになぜ空中で燃料が急速に減少したのか。

この機体は数日前のエンジンの整備で本来、エンジンに取り付けるべき配管部品を形状が数mm異なる別の部品で代用ていました。

その部品が飛行中の振動で燃料配管とエンジンが干渉するようになり、燃料配管に亀裂が生じて燃料漏れが発生したため、急激に燃料が減っていきました。

今回はラムエアタービンについてでした。

ラムエアタービンが活躍するのは航空機のすべてのエンジンが止まるなどで発電できない状況です。

そのような状況になることはほぼありませんのでRATを使う機会もまたほぼありません。

しかしRATには飛行機を最後まで安全に着陸させるための工夫が垣間見れましたね。


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