飛行機の割り込み?鹿児島空港での出来事。

こんにちは。

今回は着陸のために最終進入コース上を滑走路へ向け進入中だった飛行機からの異常接近報告が提出された事例です。いわゆる他機とのニアミスの報告です。

2015年10月10日鹿児島空港周辺での出来事

2015年10月10日(土)、日本航空のB767-300型機が鹿児島空港に向けて最終進入中、小型機の新日本航空所属ブリテン・ノーマン式BN-2B-20型アイランダー(JA80CT)が左前下方から進入経路に割り込む形で接近してきたため、復行により回避した。

小型機がJAL機の前に割り込んでしまったのは小型機のパイロットが管制官の情報と指示を正しく理解しておらず、本来の順位より先に滑走路へ向かう飛行を行なってしまったためである。

ブリテン・ノーマン/アイランダー   画像:ブリテン・ノーマン公式HPより

上の写真が小型機アイランダーの方です。

アイランダー(:Islander )の名の通り、島と島の間を結ぶ飛行機として設計された飛行機です。

国内では新潟空港と佐渡島を結ぶ路線で使用されていたこともあります。

目次

当面の状況

インシデント当時、鹿児島空港周辺を飛行していた航空機は次の図のようになっています。

出典:運輸安全委員会航空重大インシデント調査報告書よ

A機はJALのB767型機でB機は新日本航空の小型機になります。

鹿児島空港は当時、滑走路RWY34で運用しており、到着機は全て空港の南側から進入してくる状況です。

鹿児島空港の管制官は、1番に滑走路の最も近くにいるDHC-8型機(図の青色)を着陸させ、2番目にA機(日本航空B767型機)、3番目に空港の西で待機しているB機(新日本航空所属の小型機)を着陸させようと考えていました。

管制官はB機に対し、「先行機は最終進入コース上、13マイルにいるB767型機です」と情報を伝える。

管制塔

B機は空港の西側で待機してください。あなたの先行機は最終進入コース上、13マイルにいるB767型機です。

B機

了解です。探します。

1分ほど経過した後、管制官は待機中のB機にもう一度、先行機の情報を伝えます。

管制塔

先ほどの先行機は最終進入コース上、9マイルになりました。この飛行機を見つけたら連絡してください。

B機

最終進入コースの飛行機を見つけました。

管制塔

その飛行機に続いて飛行してください。

管制官は「最終進入コース上9マイルの位置にいる2番目の到着機であるJALのB767型機に続いて飛行してほしい」という意図でB機に指示をしました。しかしB機が見つけた飛行機は滑走路から1マイルの位置を飛行してる1番目の到着機であるDHC-8型機でした。

これにより管制官のプランでは3番機にするはずだったB機が2番機のJALのB767の前に割り込む形になってしまい、両機は接近することになりました。

どうすれば防げたか

今回の件で管制官がB機に出した情報は的確なものでした。

しかしB機のパイロットは、本来ついていくべきB767型機ではなく、今まさに着陸しようとしていたDHC-8型機に続いて進入してしまった。

これは小型機のパイロットが、

  • 関連機の位置情報 (滑走路から1マイル(約1.8km)の航空機と9マイル(約17km)の航空機)
  • 関連機の航空機型式

この2つの情報をきちんと理解できていなかったことが原因だと考えられます。

位置も全く異なる2機で航空機型式もB767型機がおよそ全長55mのターボファンエンジン、DHC-8型機は全長30m程度のターボプロップエンジン搭載の飛行機です。大きさが2倍近く違う上に片方はプロペラ機ですから管制官の情報を理解できていれば間違える可能性は極めて低い状況だったのではないかと思います。

管制官側の反省点

一方で管制官側の出した関連機情報も小型機のパイロットが間違いを誘発しうるものでした。最終進入コース上に複数の飛行機がいる状況で「その飛行機に続け」という指示は、「その飛行機」がどれを指すのか管制官とパイロットで一致していないと成立しません。

また管制官が追いかけるように指示したJAL機はまだ十数km離れた場所におり、よく探さないと見つけられない距離です。それよりも滑走路から2km程度の位置にいる飛行機に意識がいってしまったのは、人間の特性上起こりうることです。

小型機の機長を取り巻く環境について

このインシデントの報告書には、

本重大インシデント発生日の午前中、(小型機の)機長に心理的な影響を与える出来事があり、機長は当該飛行を中止することも考えたが、最近の飛行経験を充足する必要性等から飛行することとした

という記述があります。

このインシデントの発生に直接的な影響を与えたかはわかりませんが、小型機の機長は心理的に負荷がかかった状態でのフライトだったようです。

人間誰しも調子のいい時もあれば悪い時もあります。私生活で受けた精神的影響を引きずったまま仕事に行った経験は誰しもあると思います。子供が生まれたり、親族が亡くなったり、告白されたり、恋人にフラれたりと日々、さまざまなことが起こります。

そういった少しふわふわする精神状態の時は仕事のミスが起きやすいです。特にパイロットなどの人命に関わる仕事の方はミスが許されないため、自分の精神状態をよく注視しながら仕事に臨めるかを総合的に判断する必要がありそうですね。



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