管制官の仕事は飛行機同士がぶつからないように交通整理をすることです。
空港にいる飛行機はパイロットの判断で勝手に動いているわけではなく、全て管制官の指示によって動いています。
空港にも交差点のような十字路があります。交差した経路を走っている二機はどちらも急いで目的地に向かいたいと思っています。なにせ相手に道を譲って1、2分でも停止してしまうとそれだけで数千円から1万円分の燃料を消費してしまうからです。
しかし空港には車の交差点のような信号機はありません。そこで信号機の役割をするのが管制官の仕事です。管制官は空港全体のことを考えてもっとも効率的な選択をします。「自分が好きな航空会社だから向こうは待たせて先にこちらを通そう」といった空港の運用として非効率的なことはしません。
公平性を保つために日本の航空管制は特定の民間企業が行っているのではなく、全て国の公務員が担当しています。
効率的であればいいわけではない
管制官は効率以外の要素も考慮して飛行機を動かす順番を決めています。
優先させる飛行機は、
- 急病人がいる飛行機
- 機体の不具合や燃料などで急ぐ必要がある飛行機
- 空港の運用として優先させた方がいい飛行機(留まると他機の進路を塞いでしまう等)
管制官は空港全体を見て判断しなきゃいけないんだね。
そうそう。でもパイロットの視点からはどうして待たされているかわからないことも多いんだ。理由も教えてくれると嬉しいよね。
自機に責任を持つパイロットと、全体を見る管制官
当たり前ですがパイロットと管制官では見えているものが異なります。管制官が空港や空域の全体を見ているのに対して、パイロットは基本的に自機のことに集中します。
管制官がエリア全体を見て飛行機同士がぶつからないように指示を出しているから、パイロットは自機の操縦に専念することができるとも言えます。
パイロットと管制官がそれぞれの視点と立場から協力することでフライト中の安全は保たれています。
航空管制がわかると空港が100倍楽しめる♪
空港の滑走路を見ていると飛行機が一定のリズムで離着陸していることがわかります。このリズムを作っているのが管制官です。滑走路は飛行機が高速で飛び交う危険な場所です。パイロットそれぞれの判断で離着陸が行われたら収集がつかなくなってしまうので、管制官が主導権を握って順番を決めたり、進入速度を調整します。
パイロットも、着陸したらなるべく迅速な滑走路の離脱をするように心がけています。滑走路は同時期に1機しか使用することができないため、滑走路の運用効率を上げるためにパイロットや管制官みんなで協力しています。
滑走路使用の注意点
- 滑走路は一時期に1機が使用する
- 滑走路の離着陸の順位は管制官が決定する
- パイロットはできるだけ早く滑走路の使用を終えるように努める
「滑走路を使うのは一時期に1機だけ」という規則は特に大切です。一つの場所を1機にだけ使うことが許可されているならば、ルールが守られている以上、他の飛行機とぶつかることはあり得ないからです。
着陸も離陸もどちらも1機につき約2分間が滑走路の使用時間として見積もられています。
もしあなたが滑走路から10番目の飛行機に乗っているとしたら
10機 × 2分間 = 20分間
最短でも着陸に20分間かかることになります。
出発機を離陸させる時は着陸機の間隔を空ける
到着機だけなら、飛行機が2分間隔でならんでいれば、よどみなく流れていきます。しかし到着する飛行機がいれば出発する飛行機がいるのが空港です。着陸機は滑走路に一列になってどんどん押し寄せてきますから、出発機は到着機のスキマを狙って出ていくしかありません。
このスキマを見計らうのが管制官の大きな仕事になります。
しかし、2分間隔の到着機の間に出発機を離陸させることはできません。出発機も2分間の滑走路使用時間が必要なため、少し誰かが遅れただけで規程の間隔がなくなり、余裕のない状態になってしまうおそれがあるためです。
通常、到着機の間に出発機を離陸させる時は、到着機を3分間あけるように調整します。3分間の間隔が空くように管制官は、例えば後ろの飛行機に速度を落とすよう指示をしたり、寄り道を指示して距離を余計に飛行させます。
こうやって作った3分間という時間で出発機を離陸させます。
空間と時間は資源!空港は数十秒も無駄にできない厳しい世界
日本で最も離着陸数が多い羽田空港で1日の離着陸数は1200回を裕に超えます。24時間で割ると1時間あたり平均50回。交通量には波がありますから、混雑時には1分間に1回以上の離着陸が行われる世界有数の繁忙空港です。
「2分に1回しか離着陸できないって言ったじゃん!」
そう思いますよね。2分に1回しか離着陸できないのは、滑走路1本に対してであり、羽田空港には滑走路が4本もあるため、離着陸が可能な機数を増やすことができます。ただ滑走路同士が交差していたり、近すぎるため、単純に滑走路1本の4倍の処理ができることにはならないのが難しいところです。
羽田空港はすでに処理能力が限界に達しており、これ以上の便数を増やす余裕はないとされています。一日中、絶えず出入りを繰り返す飛行機と飛行機の間に、時間的余裕は一切ありません。何らかのミスやトラブルで数十秒でも遅れが出ると、その遅れが後続の飛行機全てに影響を与え、膨大な遅延と燃料の無駄につながるシビアな世界です。
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