こんにちは。
今回は飛行機の大敵”バードストライク”について解説していきましょう。🐤
バードストライクとは、鳥が飛行機にぶつかることを言います。
2020年には日本国内で968件のバードストライクが報告されています。およそ1日に3件程度のバードストライクが報告されていることになりますね。
鳥の大きさや飛行機のどの部分にぶつかるかによって異なりますが、ほとんどの場合、機体に大きな損傷を与えることはありません。飛行機は機体もエンジンも鳥がぶつかることを想定して設計されているためです。
上の画像の左のグラフを見ると一番下の”0ft”のところに赤い棒グラフと青い棒グラフが長く伸びているのがよくわかります。
これはまだ空中に浮いていない状態で離陸もしくは着陸のために地上を滑走している時にバードストライクが起きることが圧倒的に多いことを示していますね。
そして高度が上がれば上がる程、鳥に衝突する件数が下がります。
空を飛ぶ鳥といえど飛行機が巡航するような高高度にを飛んでいることは稀ですからね。
バードストライクは地上に近い低高度でよく発生しますが、これが飛行機を墜落させるリスクを上げる要因にもなっています。
飛行機の離着陸時は最も事故が発生しやすいとされています。離陸動作中の3分間と着陸動作中の8分間の計11分間は「魔の11分(クリティカルイレブンミニッツ)」とも呼ばれ、航空機事故のおよそ7割がこの時間に発生するとも言われています。
この11分間は飛行機の速度が遅く不安定で、何かが起きた時にリカバリーするための地表までの時間的余裕がないためです。
バードストライクで致命傷に至りやすいのは、鳥がエンジンに吸い込まれエンジンが停止してしまう状態です。
特に離着陸のタイミング前後にエンジンが停止してしまうと安定して飛行するための推力が得られず、対処する時間もないまま地表に激突してしまいます。
特に鳥の群れの中に突っ込んでしまった場合、飛行機の各所とすべてのエンジンを同時に損傷することがあるため非常に危険です。
バードストライクによりすべてのエンジンが停止してしまった事故は近年でもゼロではないのが現実です。
今回は全エンジン停止に陥ったものの無事に不時着し、乗客乗員全員が生還した事例をご紹介しましょう。
2009年1月15日に発生したUSエアウェイズ1549便不時着水事故です。「ハドソン川の奇跡」として覚えている方もいるかもしれません。
アメリカ・ニューヨークのラガーディア空港を離陸したUSエアウェイズ1549便(エアバスA320)は、離陸直後にカナダガンの群れに遭遇し、2つのエンジンすべてが停止した。
カナダガンという鳥は翼を広げた時の幅が150cm前後ある大きめの鳥でこの事故では複数羽がエンジンに吸い込まれていた。
この事態にサレンバーガー機長は空港の管制官に状況の報告と緊急事態の宣言を行った。当初、機長は離陸した空港か近くにある空港に着陸を目指したが、エンジンの推力を失った今の自機の高度と速度ではそこまで辿り着けないと判断。かといって下はニューヨークの街並みが広がっており、もしそこに不時着させれば地上の人々に大きな被害が出てしまう。
機長は近くを流れるハドソン川への着水を決断し、管制官にその旨を連絡。水面への着水はとても高度な操縦技術が要求され、一歩間違えば機体が分解して多くの死傷者が発生する。しかし機長は安全に機体をハドソン川の水面に滑らせて機体損傷を最小に抑えることができた。
川に着水したA320は脱出シューターを使って、155名の乗客乗員全員が生還することができました。
この事故はバードストライクによる全エンジン停止の恐ろしさを認識させたと同時にサレンバーガー機長の短時間での的確な判断により搭乗した全員が無事生還した好事例として語り継がれています。
ちなみにこの事故の後、この時の着水時の進入方式がJEPPESENチャートにて作られているのでご紹介します。
こういう形で当時乗っていたクルーたちを称賛できるアメリカは本当に面白い国ですよね🇺🇸。とは言えこういった事故は二度と発生しないように願いたいです。
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