Flightradar24を見ていると時々、風変わりな飛行機を見つけることがあります。
例えば、こちら。
エアバスA330-700 Beluga XLです。
2024年5月30日23時頃、この時間に世界中にたった2機だけ飛行している飛行機を見つけました。
エアバスA330-700 Beluga XL
かわいい絵柄が描いてあって飛行機としては特異な形をしています。その形状から「シロイルカ」を意味するベルーガの愛称がつけられています。エアバスA330をベースに大きな荷物を運べるように胴体上部が大きく拡張されており、尾翼も垂直安定板が左右に1枚ずつ増設されています。
下の画像の塗装はおそらく先代のA300 Beluga STかと思われます。
飛行機のパーツを運ぶために作られた特殊な飛行機
この飛行機は、エアバス社が飛行機の部品を運ぶことを目的として設計されており、A350クラスの大型機の主翼をも2枚セットで運ぶことができます。ヨーロッパ各地で作られた航空機用の部品を最終組立施設に運ぶのに利用されています。
形状が特殊なため機体の強度が不安に思いますが、大部分を占める貨物室は非与圧で内側の気圧と外側の気圧が同じであるため機体にかかる負荷は抑えられているんでしょうね。
ちなみにエアバス社最大の旅客機であるA380の主翼や胴体は積むことができないため、そちらは船で運搬しています。
今回見つけた2機はどちらもフランスのトゥールーズを目的地としている機体でした。どちらも最終組立施設に部品を運んでいる最中だと思います。
最近はボーイングが機体不具合への対応で低迷しているので、エアバスへ受注が集まっていて忙しいのでしょうかね。1日に4回のフライトをこなしている機体もありました。ボーイング社の方も今の課題を乗り越えて近い内に復活してほしいですね。
世界に6機しか生産されていない激レアな機体
ベルーガXLは世界に6機しかなく、当然ながら出会うことが難しい機体です。
モデル | 総生産数 |
---|---|
A320シリーズ (A318, A319, A320, A321) | 10,000+ |
A330シリーズ (A330-200, A330-300, A330-800neo, A330-900neo) | 1,500+ |
A340シリーズ (A340-200, A340-300, A340-500, A340-600) | 377 |
A350シリーズ (A350-900, A350-1000) | 500+ |
A380 | 251 |
ベルーガXL (A337) | 6 (計画されている全機数) |
このようにエアバス社の他の機種と比べても圧倒的な生産数の低さですね。もし日本に飛来することがあればニュースになるくらい珍しい機体ですね。
エアバスA330シリーズの諸元
モデル | 初飛行 | 全長 (m) | 翼幅 (m) | 最大離陸重量 (kg) | 最大航続距離 (km) | 座席数 | エンジン |
---|---|---|---|---|---|---|---|
A330-200 | 1997年8月13日 | 58.82 | 60.30 | 242,000 | 13,450 | 210-250 | General Electric CF6-80E1, Pratt & Whitney PW4000, Rolls-Royce Trent 700 |
A330-300 | 1992年11月2日 | 63.66 | 60.30 | 242,000 | 11,750 | 250-300 | General Electric CF6-80E1, Pratt & Whitney PW4000, Rolls-Royce Trent 700 |
A330-800neo | 2018年11月6日 | 58.82 | 64.00 | 251,000 | 15,094 | 220-260 | Rolls-Royce Trent 7000 |
A330-900neo | 2017年10月19日 | 63.66 | 64.00 | 251,000 | 13,334 | 260-300 | Rolls-Royce Trent 7000 |
ベルーガXL (A337) | 2018年7月19日 | 63.10 | 60.30 | 227,000 | 4,074 | 2 (クルー) | Rolls-Royce Trent 700 |
A330が国際線の長距離路線に耐えられる航続距離があるのに対して、A330が原型のベルーガXLは他のA330の1/3程度しか飛行できません。それでも4,000kmの航続距離は東京からベトナムまでの距離を飛行することができます。
ベルーガXLの主な用途がヨーロッパ内での航空機用部品の運搬であるため、これくらいの航続距離があれば十分なのでしょうね。
初代ベルーガ。エアバスA300-600ST Beluga
現在、エアバス機のパーツ輸送の最前線で働いているのはA330ベースのベルーガXLですが、その先代としてA300ベースのベルーガSTという機種もあります。こちらは1994年9月13日に初飛行し、5機が生産され、現在も活躍しています。
初代ベルーガの機体の形状は2代目ベルーガであるXLとほとんど同じです。ベルーガSTはSuper Transporterを意味し、大容量の貨物を輸送するために製造されました。
ただ現在のエアバス社の主力機種であるA350XWBの主翼が片翼分しか運べない(ベルーガXLは両翼を運べる)こともあり、容量でベルーガXLに劣っています。
また最大積載時の航続距離が2,000km程度(東京-沖縄間の距離)しかありませんでした。
ベルーガSTは日本に飛来したことがある
ベルーガは飛行機の翼をも搭載できる大容量の貨物室を活かして飛行機の部品以外のものも輸送しています。
ベルーガSTが1999年に成田空港へ初めて飛来したときはドラクロワの絵画「民衆を導く女神」(259cm × 325cm)を輸送する任務を担っていました。絵画の大きさは6畳の部屋より少し小さめのサイズです。
2024年にも神戸空港にヘリコプターを運ぶために飛来しました。
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